目次

はじめに――6

 

ヤオトンに暮らす―― 9

 

窓に咲く花―― 20

 

窓花図絵Ⅰ――4

窓花こぼればなし❶―― 57

 

人と会う/人物記❶ 馬瑞蘭(マァ・ルイラン)――58

 

ヤオトンの年越し―― 64

あの世とこの世 ――76

女の手仕事 ――84

 

人と会う/人物記❷ 高鳳蓮(ガオ・フォンリエン)――96

 

窓花図絵Ⅱ――104

窓花こぼればなし❷ ――121

 

人と会う/人物記❸ 馮山雲(フォン・シャンユン)――122

 

「窓花」の歴史 ――130

 

暮らしのフィールドワーク ――136

毛家のヤオトン大図解 ――146

黄土高原マップ―― 148

 

つくってみよう ――149

 

あとがき―― 156

关于本书/ About This Book―― 158

 

 


…… 生きた花が咲いては枯れ、種を宿すように、窓に咲く花も季節がめぐるうちに色褪せ破れていく。そして古い切り紙を型紙にして重ねて切ることで、遠い 昔のかたちがまた新しい命を宿して手の中かから生まれる。一面冬枯れた黄土色の世界の中で、小さな赤い切り紙はまさに、なくてはならない花なのだ。

 

2011年東日本大震災を経験した今、黄土高原の人達が紙のかたちに込めてきた思いは、以前よりも切実なものとして私たちに迫ってくる。はかなく失われやすい紙の造形を繰り返しつくり続けてきたこと。それは生と死と再生という自然の理と願いを伝えているのではないか。

 

本書を通して、黄土高原の人びとと彼らが生み出すかたちと読者が出会うことで、自らの当たり前の暮らしに今も息づく、先祖か ら続いてきた暮らしの知恵や願いに思いをはせるきっかけとなれば幸いである。そして日本と中国の深くて複雑な関係の中で、私達のささやかな試みがお互いの 友情を深める一助になるよう心から願う。

【本書「はじめに」より】